土地が狭くて駐車スペースが取れないとき、建物の中に車を入れるという考え方があります。ビルトインガレージです。ここで知っておきたいのが、車庫の床面積は、容積率の計算から一定の範囲まで外せるというルール。ただし建ぺい率は緩和されません。何が得になって、何は変わらないのかを整理します。
緩和されるのは「容積率」だけ
まず結論です。ビルトインガレージには、容積率の計算で使う延べ面積から、車庫部分を除外できるという決まりがあります。
根拠は建築基準法施行令2条です。1項4号のただし書で「自動車車庫その他の専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設の用途に供する部分」の床面積を延べ面積に算入しないとしたうえで、3項1号でその限度を「各階の床面積の合計の5分の1」と定めています。
ここで大事なのは、緩和されるのは容積率だけだということです。
| 指標 | ビルトインガレージの扱い |
|---|---|
| 容積率(延べ面積) | 5分の1まで算入しない |
| 建ぺい率(建築面積) | そのまま算入される |
建物の中に取り込む以上、真上から見れば建物の一部です。建築面積は減りません。ここを取り違えると、土地の広さの計算が狂います。
5分の1の数え方
「延べ面積の5分の1」の分母は、車庫を含めた各階の床面積の合計です。車庫を除いたあとの面積ではありません。
| 床面積の合計車庫を含む | 車庫の面積 | 除外できる上限 | 容積率の対象 |
|---|---|---|---|
| 150㎡ | 30㎡ | 30㎡ | 120㎡ |
| 150㎡ | 40㎡ | 30㎡まで | 120㎡(10㎡は算入) |
| 200㎡ | 40㎡ | 40㎡ | 160㎡ |
2行目に注目してください。車庫を大きくしても、除外できるのは5分の1までです。それを超えた分は、普通の部屋と同じように延べ面積に数えられます。
この緩和で、建物はどれだけ大きくなるか
車庫をちょうど5分の1にすると、容積率の対象になるのは全体の5分の4です。逆に言えば、容積率いっぱいまで建てる場合、建物全体は1.25倍まで取れる計算になります。
| 容積率から計算した上限 | 車庫を5分の1にした場合の全体 | うち車庫 |
|---|---|---|
| 120㎡(約36坪) | 150㎡(約45坪) | 30㎡ |
| 160㎡(約48坪) | 200㎡(約61坪) | 40㎡ |
これは単純計算の目安で、この大きさの家が必ず建つという意味ではありません。建ぺい率、高さ制限、斜線制限、前面道路の幅による容積率の制限など、ほかの条件が先に上限になることがあります。前面道路による制限は「容積率が下がる?前面道路の幅による制限」で解説しています。
狭い土地では、建ぺい率が先に効いてくる
ここが、土地探しでいちばん効く話です。
30坪(約99㎡)・建ぺい率60%の土地を例にすると、建築面積の上限は約60㎡です。ここからガレージの面積が引かれます。
| ガレージの面積 | 1階に残る面積 |
|---|---|
| 15㎡ | 約45㎡(約13.5坪) |
| 18㎡ | 約42㎡(約12.6坪) |
| 20㎡ | 約40㎡(約11.9坪) |
1階が40㎡強となると、LDK・浴室・洗面・トイレ・玄関を収めるのはかなり窮屈です。そのため、ビルトインガレージのある家は2階にLDKを置く設計になりやすく、3階建てを検討することもあります。
「容積率が緩和されるから狭い土地でも大丈夫」とは限りません。先に建ぺい率を確認してください。
自分の場合は何坪くらいの土地が必要か、建てたい家から調べられます →
構造の注意点
ガレージは、車が出入りするために正面がほぼ全面開口になります。木造住宅では、この面に耐力壁(地震や風に抵抗する壁)をほとんど配置できません。
そのうえに2階・3階が載るため、開口部の上を支える梁が大きくなり、構造の検討が必要になります。鉄骨やRC造を併用する、開口の幅を抑える、といった対応を取ることもあります。
どこまで実現できるかは構造計算の結果によるので、間取りを決める前に、施工会社や設計者に相談してください。
内装の仕上げにも制限がかかります
意外と知られていないのが、内装制限です。建築基準法施行令128条の41項2号は、自動車車庫の用途に供する特殊建築物を内装制限の対象として挙げており、ほかの用途と違って面積の下限が書かれていません。
内装制限とは、火災が広がりにくいよう、壁や天井の仕上げを燃えにくい材料にする決まりです。ガレージの内装に木を使いたい、といった希望は制限を受ける可能性があります。
実際の適用範囲は、建物の規模や自治体の運用によって判断が分かれることがあります。仕上げにこだわりがある場合は、早い段階で設計者に確認してください。
ガレージの広さの目安
国土交通省の駐車場設計・施工指針では、普通乗用車の駐車ますを幅2.5m × 長さ6.0mとしています。
ただしビルトインガレージは左右が壁です。屋外の駐車スペースなら隣にはみ出して乗り降りできますが、壁の中ではそれができません。この寸法のままでは、扉を開けて降りるのが窮屈になります。
必要な広さは、停める車種と、ガレージで何をするか(自転車を置く、荷物を積み下ろす、工具を置く)によって変わります。屋外に2台停める場合の面積は「駐車2台に必要な広さは?土地の面積から逆算する」にまとめています。
買う前に確認したいチェックリスト
| 確認項目 | 何を見る | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 建ぺい率 | 物件情報の「建ぺい率」欄 | ガレージは建築面積に算入される。ここが先に上限になりやすい |
| 容積率 | 指定容積率と前面道路の幅 | 5分の1の緩和が効くのは、この計算に対して |
| 前面道路の幅 | ◯m・車の進入角度 | 道路が狭いと、ガレージに真っすぐ入れられない |
| 希望する1階の広さ | LDKを1階に置くか | ガレージの分、1階の居室が狭くなる |
| 階数 | 2階建てか3階建てか | 1階が狭くなる分、上に伸ばす必要が出る |
| 構造の検討 | 開口の幅と梁 | 実現できる開口の大きさは構造計算による |
よくある質問
ビルトインガレージは容積率に入りますか?
全部は入りません。各階の床面積の合計の5分の1を限度として、容積率の計算に使う延べ面積に算入しません。5分の1を超えた部分は算入されます。
建ぺい率も緩和されますか?
されません。緩和があるのは容積率だけです。ビルトインガレージは建物の一部なので、建築面積にはそのまま算入されます。狭い土地では、容積率より先に建ぺい率が上限になることが多く、その場合ガレージの面積だけ1階の居室が狭くなります。
カーポートとの違いは何ですか?
カーポートは屋根と柱だけなので、壁に囲まれた床面積が生じず、延べ面積には基本的に関係しません。一方で建築物として建築面積には算入されるため、建ぺい率には効きます。ビルトインガレージは壁に囲まれるため床面積が生じ、容積率の5分の1緩和の対象になります。どちらも建ぺい率を消費する点は共通です。
5分の1の緩和で、建物はどれくらい大きくできますか?
車庫を延べ面積のちょうど5分の1にすると、容積率の対象になるのは全体の5分の4です。したがって容積率いっぱいまで建てるなら、建物全体は上限の1.25倍まで取れる計算になります。上限が160㎡なら、車庫40㎡を含めて全体200㎡です。
ガレージの広さはどれくらい必要ですか?
国の指針が示す普通乗用車の駐車ますは2.5m×6.0mですが、ビルトインガレージは左右が壁になるため、この寸法では扉の開閉に余裕がありません。実際の寸法は、停める車種と、車庫内で何をするかから決めることになります。
この記事だけで判断できますか?
できません。この記事は制度の考え方と、土地を見るときの確認点を整理したものです。緩和が実際にどこまで適用されるか、構造や内装制限がどう関わるかは、建物の計画と自治体の運用によって変わります。必ず建築士・施工会社・自治体の窓口にご確認ください。
ガレージを入れても希望の家が入るか、先に確かめる
「この土地、ガレージを作ったら家が小さくなりすぎないかな…」
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この記事を読んだ方が、次に確認していることが多い項目です。
※ 本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。緩和の適用範囲、内装制限、構造の可否は、建物の計画・規模・自治体の運用によって異なります。必ず建築士・施工会社・自治体の窓口にご確認ください。
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