同じ広さなのに、まわりより明らかに安い土地。物件情報をよく見ると「市街化調整区域」と書いてあることがあります。ここは「市街化を抑制すべき区域」で、家を建てるには原則として許可が必要です。誰でも建てられるわけではありません。安い理由と、建てられる場合の条件を、法律の条文から整理します。
市街化調整区域とは何か
都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域に分けられていることがあります。これを区域区分(線引き)といい、都市計画法7条が定めています。
| 区分 | 法律上の定義 |
|---|---|
| 市街化区域 | すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(7条2項) |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域(7条3項) |
条文はたった一行です。「市街化を抑制すべき区域」。つまり国や自治体が「ここは街にしません」と決めた場所です。家が建ちにくいのは、制度がそう設計されているからです。
原則として、許可がないと建てられません
同じ法律の43条に、こう書かれています。
「何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ(中略)建築物を新築し(中略)てはならない」
「何人も」という書き出しです。土地を持っているかどうかに関係なく、原則は建てられません。
土地を造成して家を建てる場合は、その前に29条の開発許可が必要になります。そして34条は、市街化調整区域での開発許可は、決められた条件のいずれかに当てはまらなければ出してはならないと定めています。
それでも建てられる場合
抑制する区域とはいえ、まったく建てられないわけではありません。代表的なものを挙げます。
| 根拠 | どんな場合か |
|---|---|
| 29条1項2号 | 農林漁業用の建築物と、その業を営む人の住宅。開発許可が不要とされています |
| 34条11号 | 市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連なっている地域のうち、自治体の条例で指定された区域 |
| 34条12号 | 自治体の条例で、区域・目的・建物の用途を限って定められたもの |
| 34条14号 | 知事が開発審査会の議を経て、市街化を促進せず、市街化区域で行うのが困難と認めたもの |
注目したいのは、11号と12号が「自治体の条例で」と書いてあることです。つまり建てられるかどうかは、市区町村によってまったく違います。隣町では建てられて、こちらでは建てられない、ということが普通に起こります。
ネットの情報や、他の地域の事例は、そのまま当てはまりません。必ずその土地の自治体に確認してください。
「昔から宅地だった」は、もう通用しません
市街化調整区域の話でよく出てくるのが既存宅地です。線引きより前から宅地だった土地は、確認を受ければ許可なしで建てられる、という制度がありました。
これは廃止されています。平成12年の法改正で平成13年5月18日に廃止され、経過措置も平成18年5月17日で終了しました。
いまは前述の34条11号・12号の条例や、14号の開発審査会の基準に置き換わっています。「昔は宅地だったから大丈夫」という説明を受けたら、その根拠が現在のどの規定なのかを確認してください。
気になる土地がすでにあるなら、その土地に希望の家が入るかを確認できます →
安い理由は、そのまま買ったあとの負担になります
市街化調整区域の土地が相場より安いのは、買える人と建てられる建物が限られるからです。ただし、価格差の理由はそれだけではありません。
- 上下水道が引かれていないことがある。市街化を抑制する区域なので、インフラの整備も優先されません。引き込み工事で数十万〜100万円超かかることがあります。詳しくは「上下水道・ガスの確認、見落としていませんか?」をご覧ください。
- 住宅ローンで不利になることがある。担保としての評価が低く見られやすく、金融機関によって扱いが変わります。借りられるかどうかは、早い段階で確認したほうが安全です。
- 売るときも同じ制約がかかる。次に買う人も同じ許可の問題に直面します。売りにくさは、そのまま資産価値に響きます。
- 生活のインフラが遠いことがある。学校・病院・スーパーまでの距離は、毎日のことになります。
「安いから」で決めると、あとから出てくる費用と制約で逆転することがあります。
買う前に確認したいチェックリスト
| 確認項目 | どこで確認するか | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 区域区分 | 物件情報の「都市計画」欄/自治体の都市計画課 | 市街化調整区域かどうかが出発点 |
| 建てられる根拠 | 自治体の都市計画課・建築指導課 | 34条の何号に当たるのか。条例の指定区域内か |
| 誰が建てられるか | 同上 | 農林漁業者など、人に条件が付く場合がある |
| 許可にかかる期間と費用 | 不動産会社・設計者 | 申請の手間と時間が計画に影響する |
| 上下水道・ガス | 自治体の水道課・ガス会社 | 引き込み費用が大きく変わる |
| 住宅ローン | 金融機関 | 評価と融資の可否を先に確かめる |
| 売るときのこと | 不動産会社 | 次の買主も同じ制約を受ける |
順番が大事です。建てられるかどうかが決まらないうちに、間取りや予算の話を進めても意味がありません。まず自治体の窓口に、住所を持って相談してください。相談は無料です。
よくある質問
市街化調整区域に家は建てられますか?
原則として、都道府県知事などの許可が必要です。都市計画法7条3項は「市街化を抑制すべき区域」と定めており、43条は開発許可を受けた区域以外で許可なく建物を新築することを禁じています。「誰でも建てられる」わけではないと考えてください。
なぜ市街化調整区域の土地は安いのですか?
建てられる人と建物が限られるため、買える人が少ないからです。加えて、上下水道が引かれていないことがある、住宅ローンの評価が低くなりやすい、将来売るときも同じ制約がかかる、といった事情が重なります。安いのには理由があり、その理由がそのまま買ったあとの負担になります。
農家なら建てられると聞きましたが本当ですか?
都市計画法29条1項2号は、農業・林業・漁業の用に供する一定の建築物と、これらの業務を営む人の住宅について開発許可を不要としています。ただし対象になるのは実際にその業を営んでいる人で、誰でも当てはまるものではありません。
「昔から宅地だった」土地なら建て替えできますか?
かつての既存宅地確認の制度は平成13年5月18日で廃止され、経過措置も平成18年5月17日で終了しています。現在は34条11号・12号の条例による区域指定や、14号の開発審査会の判断によって建てられる場合があります。扱いは自治体ごとに違います。
市街化調整区域かどうかは、どこで分かりますか?
物件情報の「都市計画」欄に記載されます。記載がない場合は、自治体の都市計画課で確認できます。多くの自治体がインターネットで都市計画図を公開しており、住所から調べられます。用途地域が「無指定」となっている場合も、区域区分を必ず確認してください。用途地域については「用途地域とは?13種類と確認すべきこと」で解説しています。
この記事だけで判断できますか?
できません。市街化調整区域で建てられるかどうかは、自治体の条例、開発審査会の基準、土地の来歴、買う人の事情によって変わります。必ず自治体の都市計画課・建築指導課と、不動産会社・建築士にご確認ください。
建てられると分かってから、中身を確かめる
「この土地、そもそも家を建てられるのかな…」
そんな不安、契約前に解消しておきたいですよね。区域の確認が済んだら、土地の情報と「延床面積・階数・駐車場」などの希望条件を入れるだけで、相性と確認すべきポイントが分かるこちらのツールをご活用ください。
どちらも無料・登録不要/1分ほどで終わります
この記事を読んだ方が、次に確認していることが多い項目です。
※ 本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。市街化調整区域で建築できるかどうかは、自治体の条例・開発審査会の基準・土地の来歴・申請する人の事情によって異なります。必ず自治体の都市計画課・建築指導課、不動産会社、建築士にご確認ください。
運営者について: 運営者情報