相続した空き家、
まず何から確認する?

親から家を相続したものの、遠方に住んでいて使う予定もない——。空き家の約55%は相続によって取得されたもので、決して珍しい状況ではありません。ただ「売る」「貸す」「解体する」を考える前に、先に確かめておいたほうがいい順番があります。この記事では、相続した空き家について、何から手をつけるかを整理します。

まず「そもそも建て替えられるのか」から

売却を考えるとき、多くの方は査定額から調べ始めます。しかし土地としての価値は、その土地に新しく家を建てられるかどうかで大きく変わります。

建て替えができる土地なら、古い家を解体して更地として売る道があります。一方、建て替えが難しい土地は、買い手にとって使い道が限られるため、条件が変わってきます。この違いは査定額より先に効いてくるので、最初に確認する価値があります。

建て替えの可否を左右する主な条件

古い家ほど、現在の基準を満たしていない可能性があります。詳しくは「古家付き土地は「お得」?解体費と再建築を確認する順番」「前面道路が4m未満の土地、家は建てられる?」で解説しています。

期限のあるものから片付ける

相続した空き家には、いくつか期限のある手続きがあります。慌てる必要はありませんが、知らずに過ぎてしまうと選択肢が減るものがあります。

相続登記の義務化(2024年4月〜)

2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内登記を申請することが義務づけられました。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象になります。

重要なのは、2024年4月1日より前に相続した分にも遡って適用される点です。この場合の期限は2027年3月31日とされています。「何年も前に相続したまま放置している」という場合も対象になります。

なお、遺産分割の話し合いがまとまらない場合に備えて、相続人申告登記という簡易な手続きも新設されました。これを申し出れば、ひとまず申請義務を果たしたものとして扱われます。ただし所有権を移す登記そのものではないため、分割がまとまった後に改めて登記が必要です。

売却する場合の税制優遇(2027年12月末まで)

相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から控除を受けられる特例があります。「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」で、いわゆる空き家の3,000万円特別控除と呼ばれるものです。

期限が2つあるので注意が必要です。

つまり制度が使える期間内であっても、相続から時間が経ちすぎると対象外になります。

この特例は要件が細かい制度です

主な要件として、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物でないこと、相続開始の直前に被相続人がひとりで住んでいたことなどがあります。ほかにも譲渡対価が1億円以下であることや、相続時から譲渡時まで賃貸などに使っていないことといった条件があります。

また、売却時に耐震基準を満たすか、家屋を取り壊す必要があります。2024年1月1日以後の譲渡からは、買主が譲渡後に耐震改修や取り壊しを行う場合も対象に加わりました。一方で、相続人が3人以上の場合は控除額が1人あたり2,000万円に縮小されています。

要件の判定は個別の事情によって変わります。適用できるかどうかは、必ず税務署または税理士にご確認ください。この記事は制度の存在と期限をお伝えするもので、適用の可否を判断するものではありません。

放置したときに起きること

固定資産税が上がる場合がある

住宅が建っている土地には住宅用地の特例があり、固定資産税の課税標準が軽減されています。ただし空家等対策特別措置法にもとづき、「特定空家等」または「管理不全空家等」として市町村から勧告を受けると、この特例の対象から外れます

「管理不全空家等」は2023年12月13日施行の法改正で新設された区分で、特定空家の一歩手前——このまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態を指します。以前より早い段階で対象になりうる、という点が変わりました。

ただし、指定されただけで自動的に特例が外れるわけではなく、勧告を受けた時点が分かれ目です。また、どの段階で勧告に至るかの運用は市町村によって異なります。

「税金が6倍になる」という説明について

よく見かける表現ですが、正確ではありません。住宅用地の特例は課税標準を最大6分の1に軽減するものなので、これが外れると土地の固定資産税は上がります。ただし建物がなくなれば家屋分の固定資産税はかからなくなりますし、土地の固定資産税には負担調整措置もあります。支払総額がそのまま6倍になるわけではありません。

相続放棄をしても、管理の責任が残ることがある

「相続放棄すれば関係なくなる」と考えられがちですが、条件があります。民法940条では、相続放棄をした人が放棄の時にその財産を現に占有している場合、相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、自分の財産と同じ注意をもって保存する義務があるとされています。

2023年4月施行の改正で「現に占有しているとき」に限定され、義務の内容も「管理」から「保存」に整理されました。とはいえ、住んでいた・鍵を管理していたといった状況では義務が生じる可能性があるため、放棄を検討する場合は司法書士や弁護士にご相談ください。

確認したいチェックリスト

確認項目何を見るなぜ重要か
建て替えができるか接道の状況・道路の種別土地の使い道と価値が大きく変わる
建築時期登記事項証明書・建築確認の記録昭和56年5月31日以前かどうかが税制の要件に関わる
相続登記が済んでいるか登記事項証明書の名義3年以内の申請義務がある(過去分は2027年3月末)
相続の開始日被相続人の死亡日税制の特例が使える期限の起点になる
建物の現況傷み・雨漏り・傾きなど勧告の対象になるかどうか、解体費の見積りの前提になる
他に相続人がいるか相続人の人数3人以上だと控除額の扱いが変わる
自治体からの通知指導・勧告の有無勧告を受けると固定資産税の特例が外れる

よくある質問

何年も前に相続したまま放置していますが、今からでも登記は必要ですか?

必要です。2024年4月1日より前の相続にも義務が及び、その場合の期限は2027年3月31日とされています。手続きの進め方は、法務局または司法書士にご相談ください。

過料は必ず科されるのですか?

自動的に科されるものではありません。登記官からの催告などを経て、裁判所が判断する仕組みです。また「正当な理由」がある場合は対象外とされています。ただし期限があること自体は変わらないので、放置しないほうが安全です。

解体してから売るのと、そのまま売るのはどちらがいいですか?

一概には言えません。解体には費用がかかり、更地にすると住宅用地の特例が外れて土地の固定資産税が上がります。一方で、買い手にとっては更地のほうが検討しやすい場合もあります。税制の特例では、売却時に耐震基準を満たすか取り壊すことが要件とされており、2024年からは買主が譲渡後に行う場合も対象になりました。どちらが有利かは個別の条件によって変わるため、不動産会社と税理士の両方にご確認ください。

この記事の内容だけで判断できますか?

できません。特に税制の特例は要件が細かく、個別の事情によって適用の可否が変わります。この記事は「何を確認すべきか」「いつまでに動く必要があるか」を整理したもので、判断そのものは専門家にご相談ください。

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※ 本記事は制度の概要と確認の順番を整理したものです。税制の特例の適用可否、登記の手続き、相続放棄の判断は、個別の事情によって大きく変わります。必ず税務署・税理士・司法書士・弁護士など、それぞれの専門家にご確認ください。
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