「この家、建ぺい率を超えているみたいだけど大丈夫?」。中古住宅を見ていると出てくる話です。カーポートを後から建てて超えてしまった、という相談もあります。建ぺい率を超えている家には、2つのまったく違う種類があります。「昔は合法だった家」と「最初から違反だった家」です。見分け方と、確かめる順番を整理します。
まず、2つを分けて考える
| 種類 | どういう状態か | 法律上の扱い |
|---|---|---|
| 既存不適格 | 建てた当時は合法。あとからルールが変わって超えた | その規定は適用されない(法3条2項) |
| 違反建築物 | 建てた当時から違反していた | 是正を命じられることがある(法9条1項) |
同じ「建ぺい率オーバー」でも、この2つはまったく別物です。順に見ていきます。
既存不適格:あとからルールが変わった家
建築基準法3条2項に、こう書かれています。
「この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物……がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物……に対しては、当該規定は、適用しない」
つまり、建てたあとでルールが変わっても、さかのぼって違反にはしないという決まりです。
建ぺい率は都市計画で決まるので、都市計画の見直しで数字が下がることがあります。建ぺい率70%の地域で合法に建てた家が、地域の指定変更で60%になれば、その家は超えた状態になります。でも、建てた当時は正しかったのですから、違反ではありません。
たとえると、制限速度が60km/hから50km/hに変わったからといって、昔60km/hで走ったことが違反にはならないのと同じ考え方です。
違反建築物:最初から超えていた家
一方、建てた当時の決まりにも違反していた建物は、保護されません。建築基準法9条1項は、特定行政庁が次の措置を命じられると定めています。
「当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他……違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる」
命じられる相手は建築主だけではありません。条文には「当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者」も挙げられています。買った人が所有者になれば、その対象になり得るということです。
さらに同法98条1項1号は、この命令に違反した者を3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めています。
ただし、現実には住宅で即座に除却命令が出ることはまれです。「命じられる可能性がある状態」で買うことのリスクを、どう見るかという話になります。
いちばんの落とし穴:増築で保護が外れる
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
既存不適格は「そのままなら適用しない」というだけで、手を入れると話が変わります。同じ3条の3項3号に、こうあります。
「工事の着手がこの法律……の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地」には、2項を適用しない。
つまり増築や大規模な改修をすると、既存不適格としての扱いが外れ、今のルールに合わせる必要が出てきます。
カーポートの後付けは、この「増築」にあたります。カーポートは屋根と柱を持つ建築物なので、その面積は建築面積に加わります(カーポートは建ぺい率に入る?)。建ぺい率にぎりぎりまで使っている家に後から付ければ、超えてしまうことがあります。
たとえると、古い家を「そのままならOK」と認めてもらっていたのに、増築届を出した瞬間に「では全体を今の基準で見ます」と言われるようなものです。
買う前に確かめる3つのもの
中古住宅やカーポート付きの家を見るときは、この3つを順に確認します。
1. 検査済証
工事が終わったあとに検査を受け、建築物とその敷地が基準に適合していると認められたときに交付される書面です。建築基準法7条5項に定めがあります。
検査済証があれば、少なくとも完成した時点では基準に合っていたことが分かります。ない場合は「違反だから無い」とは限らず、昔は検査を受けない慣習があった時期もありますが、確かめるべきことが増えるのは確かです。
2. 確認申請の図面と、今の建物の一致
申請のときの図面に無いものが建っていれば、あとから増築された可能性があります。カーポート、物置、サンルーム、後から広げた部屋などが典型です。図面と現地を見比べてください。
3. 重要事項説明書
宅地建物取引業法35条1項2号は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限……に関する事項の概要」を書面で説明しなければならないと定めています。
建ぺい率を超えているかどうかは、ここで聞くべきことです。「既存不適格ですか、それとも違反ですか」と、言葉を分けて質問してください。
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住宅ローンへの影響
これは法律の話ではなく、金融機関の判断です。
一般に、違反建築物は住宅ローンの審査で不利になるとされています。担保としての評価が下がるためです。既存不適格については、金融機関によって扱いが分かれます。
法律で決まっているわけではないので、取り扱いは金融機関ごとに違います。中古住宅を検討しているなら、物件を決める前に、取引先の金融機関と不動産会社の両方に確認してください。「この物件で融資は受けられますか」と、物件の資料を見せて聞くのが確実です。
将来の建て替えにも影響する
見落とされやすいのが、建て替えるときの大きさです。
既存不適格の家は、今の建物の大きさでは建て替えられません。建て替えは新しく建てることなので、今のルールが全部かかります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 土地の面積 | 150㎡ |
| 建てた当時の建ぺい率 | 70% → 建築面積105㎡ |
| 現在の建ぺい率 | 60% → 建築面積90㎡ |
| 建て替えたときの差 | 15㎡(約4.5坪)小さくなる |
「今と同じ家をもう一度建てられると思っていたら、一回り小さくなった」ということが起こります。中古住宅を長く住む前提で買うなら、建て替えのときの数字も先に計算しておくと安心です。
確認したいチェックリスト
| 確認項目 | どこで確認するか | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 既存不適格か違反か | 不動産会社・重要事項説明書 | 扱いがまったく違う |
| 検査済証の有無 | 売主・不動産会社 | 完成時に基準に合っていたかが分かる |
| 確認申請の図面と現況 | 図面と現地 | あとからの増築が見つかることがある |
| カーポート・物置の有無 | 現地 | 建築面積に加わることがある |
| 現在の建ぺい率と容積率 | 物件情報・市区町村 | 建て替えのときの上限になる |
| 住宅ローンの可否 | 金融機関 | 法律ではなく金融機関の判断で決まる |
| 是正の指導を受けていないか | 市区町村の建築指導課 | 過去の経緯が分かることがある |
既存不適格そのものは、違反ではありません。中古住宅には珍しくない状態です。大事なのは、どちらにあたるのかを言葉で確かめ、将来の建て替えとローンの見通しを立てたうえで決めることです。
よくある質問
建ぺい率オーバーの家は、すぐ壊さないといけませんか?
一律にそうなるわけではありません。建てた当時の決まりには合っていて、あとからルールが変わって超えた状態になったものは「既存不適格」と呼ばれ、建築基準法3条2項により、その規定は適用されません。一方、建てた当時から違反していたものは違反建築物で、同法9条1項により特定行政庁が除却や使用禁止などの是正を命じることができます。どちらにあたるかで扱いが変わります。
既存不適格と違反建築物は、どこが違いますか?
建てた時点で合法だったかどうかです。建築基準法3条2項は、規定の施行や適用のときに現に存在していた建築物で、その規定に適合しない部分には、その規定を適用しないと定めています。つまり後からルールが変わって超えた家は、そのままでは違反になりません。これに対し、建てた当時の決まりにも違反していた建物は違反建築物で、保護の対象になりません。
カーポートを後から建てると、どうなりますか?
建ぺい率を超えてしまう場合、その増築は違反になります。さらに建築基準法3条3項3号により、規定の施行や適用の後に工事に着手した増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替には、3条2項の既存不適格の扱いが適用されません。つまり、既存不適格だった建物に手を入れると、建物全体を今のルールに合わせる必要が出てくる場合があります。
住宅ローンは通りますか?
一般に、違反建築物は住宅ローンの審査で不利になるとされています。これは法律ではなく各金融機関の判断なので、取り扱いは金融機関によって異なります。中古住宅を検討しているなら、物件を決める前に、取引先の金融機関と不動産会社の両方に確認してください。
違反かどうかは、どうやって確かめますか?
検査済証の有無が最初の手がかりです。工事の完了後に検査を受け、建築物とその敷地が基準に適合していると認められたときに交付される書面で、建築基準法7条5項に定めがあります。あわせて、建築確認申請書の図面と現況が一致しているか、不動産会社から渡される重要事項説明書に建築基準法上の制限がどう書かれているかを確認してください。宅地建物取引業法35条1項2号は、建築基準法などの制限の概要を契約前に説明することを義務づけています。
この記事だけで判断できますか?
できません。既存不適格にあたるか違反建築物にあたるかは、建築の時期、当時の規定、増築の履歴、自治体の運用によって変わります。この記事は制度の考え方と確認の順番を整理したものです。実際の判断は、市区町村の建築指導課、不動産会社、建築士にご確認ください。
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この記事を読んだ方が、次に確認していることが多い項目です。
※ 本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。既存不適格にあたるか違反建築物にあたるかは、建築の時期、当時の規定、増築の履歴、自治体の運用によって異なります。住宅ローンの取り扱いは各金融機関の判断によります。実際の判断は、必ず市区町村の建築指導課、不動産会社、建築士、金融機関にご確認ください。
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